黒川温泉は熊本県阿蘇郡南小国町にある温泉街で、昔ながらの風情が残る温泉街です。ご存知の人もいらっしゃるかもしれませんが、この黒川温泉、2009年度版のミシェラングリーンガイドで2つ星で紹介されたのです。2つ星って日本の温泉街では結構異例なんですよ。
街全体で作る温泉街
この黒川温泉、田ノ原川を中心にたった24軒の温泉宿から構成される温泉街で、和風の、しかも田舎風の温泉宿が立ち並ぶ温泉街なのです。大きなホテルや華美なネオンなどの看板はなく、すべての温泉宿が看板なしでまちづくりに協力し、街全体で温泉街の雰囲気を作り出している珍しい温泉街なのです。
温泉街というと想像するのがやはり歓楽街ではないでしょうか。ネオンや電飾で飾られた看板など、ちょっと昭和の香りがするような飲み屋街がこれぞ温泉街というイメージがありますが、この黒川温泉はそういった華美な看板などをすべて取り払い、ふるきよき日本の温泉街を街全体で作り出しているのです。
この黒川温泉は道路の整備や保養所の指定などで一時急激な盛り上がりを見せました。その時はこれまでやっていた農業をやめ、温泉宿を始める人までいたそうですよ。しかしブームが去ると急激に人の足がこの黒川温泉に運ばなくなったのです。しかしその黒皮温泉郷を救ったのが一人の温泉宿の主人でした。その宿だけはブームが去った後でも客足が鈍らなかったのです。
宿の主人は露天風呂を自然の形を残しつつお客様にたのしんでもらえるように工夫をしました。3年もの年月をかけて自分で洞窟を掘り、そこを温泉にしたんですよ。ほかの温泉宿もこの自然を活かした温泉づくりを真似たところ、噂を聞いた客が次々にやってきました。そして黒川温泉は見事な復活を遂げたのです。
街中の温泉が入り放題
この黒皮温泉のもう一つの特徴が、街全体の温泉宿の露天風呂がひとつの手形で3つまで入り放題という、宿同士が協力した仕掛け作りではないでしょうか。通常は顧客の取り合いをする同業者を巻き込んで地域の復興を行うというのはまさに当時にしてはイノベーションであったと言えます。宿同士の協力が地域を盛り上げ、全体的な活性化となったといえるでしょう。
黒川温泉は派手な宣伝は行いません。しかし、しっかりと情報発信を行うことでお客様を獲得し、その独特の温泉街の雰囲気や情緒でリピーターを増やしているのです。「街全体がひとつの宿、通りは廊下、旅館は客室」というキャッチフレーズもあり、街全体の結束は非常に強い力を生み出しているんですね。